踊り子と真近に向い合ったので、私はあわてて袂からタバコを取り出した。踊り子がまた連れの女の前のタバコ盆を引き寄せて私に近くしてくれた。やっぱり私は黙っていた。
我就这样和舞女面对面地靠近在一起,慌忙从衣袖里取出了香烟。舞女把摆在她同伙女人面前的烟灰缸拉过来,放在我的近边。我还是没有开口。
踊り子は十七くらいに見えた。私にはわからない古風の不思議な形に大きく髪を結っていた。それが卵形の凛々しい顔を非常に小さく見せながらも、美しく調和していた。髪を豊かに誇張して描いた、稗史的な娘の絵姿のような感じだった。踊り子の連れは四十代の女が一人、若い女が二人、他に長岡温泉の宿屋の印半纏を着た二十五六の男がいた。
那舞女看去大约十七岁。她头上盘着大得出奇的旧发髻,那发式我连名字都叫不出来,这使她严肃的鹅蛋脸上显得非常小,可是又美又调和。她就象头发画得特别丰盛的历史小说上姑娘的画像。那舞女一伙里有一个四十多岁的女人,两个年轻的姑娘,另外还有一个十五,六岁的男人,穿着印有长冈温泉旅店商号的外衣。
私はそれまでにこの踊り子たちを二度見ているのだった。最初は私が湯々島温泉へ来る途中、修善寺へ行く彼女たちと湯川橋の近くで出会った。その時は若い女が三人だったが、踊り子は太鼓を提げていた。私は振り返り振り返り眺めて、旅情が自分の身についたと思った。それから、湯々島の二日目の夜、宿屋へ流してきた。踊り子が玄関の板敷きで踊るのを、私は梯子段の中途に腰を下ろして一心に見ていた。あの日が修善寺で今夜が湯々島なら、明日は天城を南に超えて湯々野温泉へ行くのだろう。天城七里の山道できっと追いつけるだろう。そう空想して道を急いできたのだったが、雨宿りの茶屋でひったり落ち合ったものだから、私はどぎまぎしてしまったのだ。
到这时为止,我见过舞女这一伙人两次。第一次是在前往汤岛的途中,她们正到修善寺去,在汤川桥附近碰到。当时年轻的姑娘有三个,那舞女提着鼓。我一再回过头去看望她们,感到一股旅情渗入身心。然后是在汤岛的第二天夜里,她们巡回到旅馆里来了。我在楼梯半当中坐下来,一心一意地观看那舞女在大门口的走廊上跳舞。我盘算着:当天在修善寺,今天夜里到汤岛,明天越天城山往南,大概要到汤野温泉去。在二十多公里的天城山山道上准能追上她们。我这么空想着匆忙赶来,恰好在避雨的茶馆里碰上了,我心里扑通扑通地跳。