橘さん何してるの?
キッチンの片付けを。
そういうの俺やるからもう帰っていいよ。
もう少ししたら終わりますんで。
(着信音)もしもし。
もしもし幸人君今日はごめんね。
ううん全然いいよえっちゃん今帰ったの?うん。
そっか。
遅くまでお疲れさま。
それがさぁ今日ね…。
ちょっと待ってちょっと待って。
今日ね編集長にねクレモナのパーティーに連れてってもらったんだけどもうすっごいゴージャスでさ。
『ペタロ』の編集長とかレッチェのデザイナーさんとか紹介してくれたんだけど何かもう興奮しっ放しで。
でね幸人君なんとねミラノコレクションに連れてってくれるっていうの!ミラコレだよミラコレ!ミラコレ?うわっすごいじゃんえっちゃん!じゃあ新しい編集長とも分かり合えたんだね。
いや〜…うんまぁう〜ん…。
あの…そういうわけではないんだけど何かなぜか私のことは買ってくれててゆくゆくは編集長になれるって。
えっちゃんが編集長!?だからそこまで言ってくれるから何かこう頑張らなくちゃなって気になって来て。
いやそりゃそうだよ。
そっかそっかえっちゃん頑張ってね。
うん幸人君のほうは?順調?うん順調だよ俺も来週1泊取材旅行行って来る。
まぁこっちはミラノじゃなくて三島だけど。
気を付けて行って来てね。
(鍋が落ちる音)
(花恋)キャっ!えっどうした?今の何?あっえ〜っと…。
あの…腹へったからラーメン食べようと思って鍋落っことしちゃった。
やけどしてない?大丈夫?うん大丈夫大丈夫。
ごめんねごはんも作ってあげられなくて。
あぁいやいいよそんなこと気にしなくて。
あぁ…えっちゃん明日も仕事でしょ?もう寝な。
うん。
じゃあ、おやすみ。
おやすみ。
あの…。
あっすいませんこれ終わったら帰りますんで。
あっありがとう。
あ…ごはんごちそうさまでした。
はい!
ハァ…。
♪〜
(凛)今見てもらったのは「WEBLassy」のパイロット版です。
思いの外出来がよかったので来月からテスト配信することになりました。
『Lassy』をウェブ配信するってことですか?
(凛)そうよ。雑誌のようにかさばることなく、携帯でき、自分の好きな時に見たいページにだけ簡単にアクセスでき処分する手間が掛からない。
これなら仮に紙文化が絶滅したとしても生き残れる自信があります。
えっ…。
差し当たって配信は週1度。
売りは掲載した商品をワンクリックで購入できる点です。
それから河野さん。
はい?あなたの天気予報コーデもウェブで配信することにするから。
えっ?
(凛)週間天気予報に合わせて7日分のコーディネートを考えて。
週1で配信するのにピッタリの企画よね。
モデルもあなたがやりなさい。
私がですか!?
ファッションエディター悦子の週間コーデ予報。
これいいわね分かりやすいすぐに取り掛かって。
(一同)はい。
(凛)森尾さん。
あなたはサブで付いてあげて。
はい。
(登代子)Tシャツ?明るめがいいな。
これとか。
あっあっ…あ〜…。
どっちがいい?
(登代子)いや黒でしょ。
あっ雨の日あえて明るくて水はじくどう?
かわいい。
よっ。
(一同)かわいい。
開けて…傘OK。
(登代子)うんそこ立って…いいんじゃない?行くよ〜。
(カメラのシャッター音)
(登代子)OKはい次後ろ〜。
わ〜!かわいい。
(登代子)グレーなのいいね。
シンプルで。
バランスがね。
あ〜いいじゃん。
(登代子)いいいい…。
(登代子)「コーデ予報参考にしてます」。
「悦子のコーデ予報のおかげで朝服装で悩む時間が減りました」。
「週間コーデ便利!毎日やってほしい!」。
「ファッションエディター悦子もかわいい」だって。
(尾田)お〜評判いいじゃねえかよかったなえっちゃん。
ハァ…。
えっ?どうしてため息なんかつくんですか。
これ全部先輩の手柄ですよ。
ねぇ『Lassy』さホントにこのままでいいのかな?先輩…。
いや『Lassy』ってね次の号が出てもこのページのこの写真がかわいいから捨てないで取っておきたいと思える雑誌だったんだよ。
でも今の『Lassy』って何か…何か真逆の方向行ってるっていうか。
写真は凝らなくなったし文章シンプルになって次の号が出たらもう前の号捨ててもいいって思えちゃう雑誌になってるっていうか…。
まぁ確かにね。
あ〜!
(貝塚)はぁ〜あ。
何で一緒にため息つくのよ!あんたが!
創立記念本の編集大変なんですか?
森尾ちゃん聞いてくれる?実はさ目玉にしようと思っていた三枝貢の遺作が掲載できない可能性が出て来ちゃったんだよ。
かまぼこちょ〜だい。
どうしてですか?
三枝先生はねかつて結婚していた奥さんに遺産相続つまり著作権の所有ならびに管理を託したい…っていう遺言を残してたんだ。
けど、奥さんがそれを拒否してるらしくてさ。
えっ?何で拒否するんですか?だって相続したら莫大な印税が入るんでしょ?
う〜ん。
もと奥さんのほうは代理人立ててるから詳しいことはよく分かんないけど、こっちにもデッドがあるからさ。
ねぇ、創立記念本もいいけどさ、幸人君の新作のフォローちゃんとやってんでしょうね?
あれあれあれ?是永から聞いてない?俺担当外れてんだよ。
知ってるよ。
あんたが手抜きして新人付けたって話は。
どんな新人かまでは聞いたか?
どんなって?そいつ…。ちょっとかわいいのよ。
ん?名前からしてヤバいよ「橘花恋」だから花恋。
(登代子)あっ、知ってる文芸部にグラビア系の新人社員が入ったって、うちの後輩達が見に行ってた。
グラビア系?
そう。
だからなお前と違って。ここがこ〜うでここがこうでここがこ〜うな…。
ワォ!大将!はぁ?
気持ち悪っ!っつか何でそんなの幸人君に付けたわけ?
お前のその顔見たかったからよ。
(登代子)うっわ。
(貝塚)アッハハハ…!サイッテ〜!
気持ち悪っ!やめ…エロが!エロタコが!どスケベエロ!クズエロが!エロタコって。
しかも…しかもその新人…。
もともと是永の大ファンだったらしくてさ。
一日中是永に付きっきりなんだよ〜。
今もアパートに2人っきりかもしんないよ〜?2人とも若いし心配だなぁハハハ…!
別に?私幸人君のこと信じてるから。
あっそう!さすがは年上の彼女余裕ですね。
うんフフフ…!あっ…。