「美雲、元気ですか?紹興は今もまだ暑いでしょうか?僕は今、那須の南ヶ丘牧場でこの手紙を書いています……」こうして始まる「温時泉光」というタイトルの清純なショートフィルムが日本で「紹興ブーム」を巻き起こしている。日本の那須国際短編映画祭で受賞したばかりでなく、多くの日本人が紹興への旅行に興味をもつきっかけとなっている。
この作品は北京映画学院を卒業した日本人女性監督の松田奈月さんが撮影したショートフィルムで、中国の紹興と日本の那須という二つの土地を結び付け、30年の時を隔てた中日の国を越えた恋愛をベースに二つの土地の文化や観光地を紹介している。
30年の時を隔てた恋愛ストーリーは美しく、感動を呼び起こす
メインスタッフの集合写真
映画の主人公・福原幸治は30年前、まだ若かりし青年の頃、紹興を旅行で訪れた。古い町の八字橋から眺めた水郷の美しさに魅入られ、しばらく佇んでいたその時、川の船着き場で写生していた紹興で生まれ育った李美雲と出会う。美雲に連れられて紹興の有名な観光地をまわった福原は魯迅の名作を読み、紹興酒を味わった。美しい江南地域(上海市、江蘇省、浙江省などの長江下流域の南岸地域)の景色の中で、若い二人の心は次第に距離を縮め、別れがたい縁となっていく。二人は1年後に福原の故郷である那須での再会を約束するのだった。
その後一年間、福原は毎日中日大辞典を引きながら、中国語で美雲にラブレターを書き続ける。父母の強い反対に遭いながらも、美雲は1年後、愛する人に会うため、日本へ行くためのお金をかき集める。しかし出発の日、美雲にひそかに恋心を抱いていた近所の幼馴染が日本へ行く彼女を止めようとして交通事故に遭い、障害者となってしまうのだった。そんな幼馴染の思いをふりきれず、美雲は福原が書き送った全ての手紙をしまい込み、幼馴染との結婚と彼の面倒を一生見ていくことを決意するのだった。
一方、遠く離れた約束の温泉神社で、福原は美雲を待ち続けたが、彼女が現れることはなかった。美雲はその後、毎朝八字橋に来ては遠くを眺める日々を送るのだった。
ショートフィルムのワンシーン
時は白駒の隙を過ぐるが如し、あっという間に30年の月日が流れ、若々しかった若者の背は曲がり、美しい少女の面差しも時の流れと共に失われていった。美雲は夫を亡くし、八字橋沿いにあった家の取り壊しも目前に迫っていた。美雲は引っ越し準備の際、30年もの間仕舞い込んでいた木の箱を開け、福原が自分に書き送った手紙を改めて読み返した。そして彼女は那須に行ってみようと決心するのだった。
那須を訪れた美雲は民宿に泊まり、温泉に浸かり、牧場で遊び、日本酒を楽しみ、福原が手紙に記していた全ての場所を訪れた。そして雨がしとしと降る中、約束の場所だった温泉神社を訪れた美雲は、図らずも福原と再会。当時の面影はすでに失われているものの、お互いに相手を見分けることができたのだった。しかし二人のその後はどうなるのか?監督は疑問を残したままのエンディングにしている。
八字橋から見た風景は、日本人のあこがれに
19分20秒間のこの作品は中国語と日本語の二つのバージョンがあり、紹興の方言も聞くことができる。ストーリーは挿話やフラッシュバックといった手法を用いて、主人公の運命が奥深さと唯美さをともない展開されていく。作品の中で、福原幸治の青年時代を演じるのは日本の新人俳優・田中正成、中年時代は俳優の五十嵐順一が演じている。李美雲役は台湾地区の女優・林美麗が演じている。
また特に注目したいのが、少女時代の美雲を演じている紹興出身の芸能人でアイドルグループSNH48メンバーでもある胡思奕だ。可愛らしい美少女である彼女は生まれも育ちも紹興という根っからの紹興っ子だ。初めて恋人に会った時の恥ずかしげな仕草や、別れの際の辛そうな表情、遠い地の恋人に想いを馳せる様子など、作品の中での彼女の演技は真に迫っており、この作品に大いに貢献している。
八字橋でのロケの様子
松田奈月監督によれば映画の脚本を書き上げた後で、那須国際短編映画祭からの支援を得ることができたという。そして「中国の古い温泉地を探し、撮影したいと考え、いくつもの場所をまわったが、すでに開発されすぎたリゾート地のような場所ばかりで、懐かしさと美しさ、爽やかさを感じさせるような場所ではなかった。その後、魯迅や紹興酒の関係で日本人にとって懐かしさを感じさせ、身近で、共感を覚える土地である紹興を思いついた。紹興の古い町並みはとてもきちんと保存されており、30年前のような昔ながらの抒情を残している」と取材に答えている。
2015年8月、詩人の麦秸さんの案内で、中日撮影班が紹興の多くの場所を訪れ、撮影を行った。八字橋に立ち、白壁と黒い瓦屋根を眺め、小さな橋の下を水が流れる紹興の人々のリアルな生活の様子を見て、松田監督はすぐにこの場所で主なストーリーを展開していくことに決めたという。
八字橋はこの作品の中でのキーポイントとなり、福原と美雲の愛情が芽生え、育っていく様子や互いに愛し合う二人が会えないやむを得ない様子を映しだしていく。八字橋周辺の風景は全てカメラに収められ、詩人の麦さんの自宅が八字橋そばにあり、さっぱりと落ち着いた内装だったこともあり、映画の中での美雲の家のロケ地となった。
この他にも魯迅故居にある一石居飯店や黄酒博物館もロケ地となっている。また作品の中では温泉神社や千体地蔵尊、南ヶ丘牧場、清水屋、高原展望台といった那須の観光地も数多く中国人に向けて紹介されている。
この作品を見た日本人が数多くコメントする中で、ある日本人は「映像がとても美しく、ストーリーも感動的。最終的に二人が一緒になってくれればと思う。また紹興に行き、八字橋に立ってあの景色を眺めてみたいと思った」とコメントしている。
この作品は今年下半期には各大手ポータルサイトでオンライン公開されるという。
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